「技術・人文知識・国際業務ビザ」転職時の手続き、就労資格証明書とは?

2024年7月25日

就労ビザ「技術・人文知識・国際業務」をお持ちの方から、転職したいけど、今のビザのままで大丈夫ですか?次回のビザ更新のときに問題はありませんか?などお問合せをいただくことがあります。キャリアアップしたい、今の職場があわなくて環境を変えたい、など転職を考える理由は様々ですが、もし、ビザが原因となり転職先で働くことができなかったら…と考えると不安になりますよね。

技術・人文知識・国際業務ビザの方が転職するときに必要な手続きは、「現在の会社での職務内容」と「転職先での職務内容」が変わるか変わらないか、などによって対応が異なります。ご自身のケースに合わせて、転職のときに必要な手続きや気をつけることを知っておくことで、疑問や心配に思うことを減らし、安心して働くこと、キャリアの選択肢を増やすことができます。

そこで今回は、技術・人文知識・国際業務ビザの方が転職をするときに必要な手続き、ポイントとなる「就労資格証明書」のメリット・デメリット、必要書類、注意点などをお伝えします。

※技術・人文知識・国際業務ビザの要件やポイントについては以下で詳細を記載していますのでご覧ください。
就労ビザ「技術・人文知識・国際業務」の要件、不許可事例から学ぶポイント

技術・人文知識・国際業務ビザで転職するときに必要な手続き<全員>

就労ビザを持つ外国人の方が、転職や退職など、自分の所属する機関が変わったとき、14日以内に入管に届出をする必要があります。入管への届出は入管法に定められた義務ですので、届出をしないと在留状況が不良と判断され、今後の在留資格の申請や永住申請で不利になる可能性があります。忘れずに届出するようにしましょう。

<届出の種類>

  1. 契約機関との契約が終了した場合の届出
    転職や退職などで、現在の会社との契約が終了した場合の届出です。
  2. 新たな契約機関と契約を締結した場合の届出
    転職により新たな会社と契約した場合の届出です。
  3. 契約終了と新たな契約締結の届出
    会社を辞める日と新しい会社で働く日が14日以上離れていない場合の届出です。
    ①と②を両方提出するのではなく、③の一つを提出すれば大丈夫です。

※また、転職とは関係ありませんが、会社の名前や住所が変わったとき、会社がなくなってしまったときは、契約機関の名称変更・契約機関の所在地変更・契約機関の消滅の場合の届出を提出します。

<届出方法>

届出には、インターネット、窓口に持参、郵送の3つの方法があります。届出書類のフォーマットや記載例など、詳細は入管の以下ページに掲載されていますので確認してみてください。
所属(契約)機関に関する届出

技術・人文知識・国際業務ビザで転職するときに必要な手続き<ケース別>

続いて、転職するときに必要な手続きについて、3つのケースごとに説明します。

<ケース①>勤務先は変わったが、職務内容の変更なし

(例)A社で通訳の仕事をしていたが、B社に転職し、B社でも通訳の仕事をする。

このように、転職先の会社でも前の会社と同じ職務内容である場合は、次回のビザ更新申請までは特に入管に対してビザ申請をせずに働くことはできます(上記の届出は必要です。)しかし、次回のビザ更新時には、新しい転職先の会社と職務内容をはじめから審査することになるため、通常の更新申請より手間も多く、ハードルも高くなります。

そこで、ビザ更新前に、新しい会社での職務内容が現在持っているビザに対応しているかを確認し、その証明となる「就労資格証明書」の取得をおすすめします。

<ケース②>職務内容は変わったが、技術・人文知識・国際業務ビザの範囲の業務内容

(例)A社で通訳の仕事をしていたが、B社に転職し、B社でITエンジニアの仕事をする。

この場合は、「通訳」も「ITエンジニア」も技術・人文知識・国際業務ビザの範囲の業務内容ですが、技術・人文知識・国際業務ビザは、それぞれの職種に要求される学歴や実務経験などを満たしていることが要件の一つです。そのため、前の会社で通訳として技術・人文知識・国際業務ビザを取得したとしても、新しい会社でITエンジニアとして働けるかどうかは、その人がITエンジニアとして求められる学歴や実務経験等の要件を満たしているかどうかによります。

そのため、このような場合は事前に、「就労資格証明書」の取得をより強くおすすめします。

<ケース③>職務内容が変わり、技術・人文知識・国際業務ビザの範囲の業務内容ではない

(例)A社で通訳の仕事をしていたが、起業して経営者になる。

この場合、事前に必ず、技術・人文知識・国際業務ビザから経営管理ビザへの在留資格変更許可申請が必要になります。起業して経営者になることは、技術・人文知識・国際業務ビザの活動範囲ではないためです。変更許可を受ける前に経営管理の活動をしてしまうと、資格外活動として違反を問われる可能性があります。新しい活動を行う前に、必ず在留資格変更許可申請を行いましょう。

就労資格証明書とは

ケース①、ケース②で取得をおすすめした「就労資格証明書」について説明します。

就労資格証明書とは、現在持っているビザで定められた活動内容と、実際に行っている(または行う予定である)活動内容を比較し、法律の範囲内かどうかを証明するためのものです。

就労資格証明書交付申請は、必ず申請しなければならないわけではありません。就労資格証明書を取得するメリット・デメリットについて説明します。

就労資格証明書を取得するメリット

メリットとしては主に以下の3つが考えられます。

在留期間更新時に許可の可能性を高める

就労資格証明書を事前に取得しておくことで、次回のビザ更新がしやすくなります。就労資格証明書を取得することで、新しい会社での職務内容は現在持っているビザに対応すると入管が証明を与えてくれたことになるからです。

※ただし、他に法律違反や税金等の滞納があればビザ更新が認められない可能性もあります。就労資格証明書を取得していれば必ず許可になるというわけではありません。

安心して転職ができる

就労資格証明書を取得することで、安心して転職ができます。就労資格証明書の取得により、転職先での職務内容に問題がないと証明されるため、ご本人も雇用する側も安心して転職する、受け入れることができます。

不法就労者の雇用を防止できる

たとえ故意ではなかったとしても、不法就労者の雇用をしてしまうと「不法就労助長罪」に該当し、「3年以下の懲役、300万円以下の罰金、またはその併科」という重大な罰則が科せられる可能性があります。就労資格証明書を取得することで事前に法律上問題がないことを確認できるため、雇用主側の安心材料となります。

就労資格証明書を取得するデメリット

デメリットとしては、主に以下2つが考えられます。

①申請の手間がかかること

転職前と転職先の会社から書類を集めるなど、手間がかかる可能性があります。

②就労資格証明書の交付までに時間がかかること

申請から交付までに約1カ月の時間がかかります。

就労資格証明書についての注意点

就労資格証明書についての注意点を2点お伝えします。

①在留期限が迫っている場合には就労資格証明書交付申請ができない

就労資格証明書は「事前に」確認することを目的としており、申請から取得までに約1カ月の時間がかかります。そのため、現在のビザの在留期限がいつまでかによって、事前に就労資格証明書交付申請を行うか、最初から転職した状態での在留資格更新許可申請を行うか検討する必要があります。

②就労資格証明書を外国人側が提出しないことを理由に不当な扱いをしてはいけない

就労資格証明書の取得は必須ではないため、提出しないことを理由に雇用主側が不当な扱いをしてはいけません。このことは入管法19条の2第2項に定められています。

 入管法19条の2第2項

就労資格証明書交付申請の必要書類

就労資格証明書交付申請の必要書類は、以下のとおりです。一例であり、状況によって他の書類が必要なケースもあります。

・就労資格証明書交付申請書
・在留カード
・旅券
・履歴書
・最終学歴の卒業証明書
・退職証明書
・雇用契約書
・雇用理由書又は業務内容説明書
・転職先の会社謄本
・転職先直近の決算報告書
・転職先のパンフレットや資料など

以上になります。

技術・人文知識・国際業務ビザで転職するときに必要な手続き、ポイントについてお分かりになりましたでしょうか?就労資格証明書を事前に取得しておくことは、ご本人にとっても雇用主にとっても安心材料となりますので、状況に合わせて検討してみてください。具体的に自分はどのケースに当たるのか分からないなど不明点やお困りのことがございましたら、お気軽にお問合せください!

当事務所は、『日本で暮らす外国の方々が、日本で安心して生活でき、未来に希望が持てるようサポートすること』を理念とし、以下の点を大切にしています。

お困りのことがありましたら、お気軽にご相談ください。

関連する記事

■就労ビザ「技術・人文知識・国際業務」の要件、不許可事例から学ぶポイント

ページトップへ