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行政書士法人 IPPO「就労ビザから永住ビザに変更したい」と考える外国人の方はたくさんいらっしゃり、実際にご相談をよく受ける内容です。
就労ビザに比べて永住ビザは、就労制限や更新の必要がなくなるなど、より自由度が高くなりますが、その分、要件が厳しく取得するのが難しいビザです。
そこで今回は、就労ビザから永住ビザへの変更をお考えの方、また、今すぐでなくても、将来的には永住ビザを取得したい、と考えている方向けに、就労ビザから永住ビザへ変更するメリット、永住ビザと帰化の違い、就労ビザから永住ビザ申請に必要な7つのポイント、必要書類、不許可事例とアドバイスをご紹介します。
就労ビザから永住ビザへ変更することによるメリットは次の3つです。
メリット① 就労制限がなくなる
就労ビザとは日本で就労するためのビザであるため、例えば、仕事を辞めてもう一度大学で学びたいと思った場合、就労ビザの活動内容から外れます。仕事を辞める前に該当するビザへ変更申請しなければなりません。
また、例えば、就労ビザの技術・人文知識・国際業務は、前職での経験や大学・専門学校での専攻科目と従事する業務に関連性が必要であるため、転職したいと思ったときに、転職後の業務が引き続き、技術・人文知識・国際業務ビザに該当するかなど、再検討や場合によってが他のビザへの変更申請が必要な場合があります。
永住ビザであれば、このような活動内容の制限がなくなるため、ビザのことを気にせず、好きなタイミングで好きな職に就く、好きなタイミングで独立して会社を立ち上げる、など自由にライフスタイルを選択することができます。
メリット② 更新の必要がなくなる
永住ビザとは本来の国籍を維持したまま、期間の定めなく日本に滞在できることを意味します。
就労ビザなど永住ビザ以外のすべてのビザは在留期間が定められており、その期限内にビザの更新や変更の手続きをし、許可がでるか都度審査を受けなければなりません。一方、永住ビザを取得できれば、在留期限が無期限になるため、申請の手間や不安定さがなくなり、安心して生活を送ることができます。
メリット③ マイホーム購入のためなどのローンがくみやすくなる
社会的な信用が得られるため、ローンの審査においても優遇されやすくなります。数年で更新が必要なビザの場合、いつ出国してしまうか分からないため、銀行によっては永住ビザ以外の方は審査対象外になっているところが多いです。
ここまで永住ビザのメリットを紹介しましたが、「永住ビザと帰化はどう違うか?」というご質問をよく受けます。そこで、永住と帰化の違いについて簡単に説明します。
永住ビザと帰化の大きな違いは「国籍」を変更するかどうかです。
・永住ビザ:国籍はそのまま日本に外国人が滞在する在留資格の一種。
・帰化:出身国の国籍を放棄し、日本国籍を取得する、つまり日本人になることを意味する。
帰化は永住ビザと異なり日本国籍になることで、入管法上の外国人という定義から外れるため入管法に定められている外国人としての様々な義務がなくなります。そして、日本人としての参政権(日本の選挙に議員として立候補する、投票するなど)を得る、日本のパスポートを取得できる、許可の取消や退去強制の対象にならない、海外から再入国する際に再入国許可がいらない、などの特徴があります。
一方、永住ビザの審査に必要なこれまでの日本の在留状況が適正であったかどうか、という点に加え、本人の身分関係を示す資料が必要です。帰化申請は、日本人の身分事項を証明する戸籍を新しく編成する作業ですので、父母の氏名や続柄、婚姻記録、養子縁組の記録、子がいる場合は子の出生記録等、申請人本人に関わるあらゆる事項を証明する本国からの公的機関発行の証明書類の取り寄せが多数必要になります。
また、審査期間も永住が6ヶ月から10ヶ月程度の時間がかかるのに対し、1年程度かかると言われています。本国からすれば外国人になるということになるので、国によっては帰省するたびにビザを取得しなければならないということにもなります。
現在就労ビザをお持ちの方が、永住ビザを申請するときに必要となる7つのポイントは次のとおりです。不許可にならないよう、ポイントをしっかりチェックしましょう。
① 10年以上継続して日本に在留していること
・途中でビザが切れてしまっていてはいけません。在留期間内に必ず更新又は変更申請手続きを行うことが必要です。
・また、その内の5年以上を「就労ビザ」で在留していること。
就労ビザとは、就労を目的とした在留資格の通称です。就労を目的としたビザでないと条件を満たしません。例えば、「技術・人文知識・国際業務」というビザは就労ビザの一つです。「留学」、「家族滞在」、「短期滞在」ビザなどは、就労が認められていないビザなので該当しません。
※過去、留学ビザを持っていた人は注意してください。
留学の期間は就労期間としてカウントされません。具体的に言うと、留学で専門学校や大学に通い、その後日本で就職し5年以上働いてから、永住申請の資格が与えられます。留学ビザでアルバイトとして働いても就労経験には該当しません。
② 現在、保持しているビザの期限が3年以上であること
・就労ビザの在留期間は、「5年・3年・1年」などありますが、5年・3年を希望しても1年しか認められないケースもあります。
・希望した在留期間が交付されるかどうかは、会社側(会社の規模、経営安定性など)と本人側(届出、納税などの義務を守っているかなど)の状況が影響します。入管に申請する際は、これらを証明する書類を揃えて説明を行う必要があります。
・永住ビザを目指すには、まず、現在のビザの在留期間が「3年」を許可されるまで、在留期間の更新申請を続けましょう。
③ 申請直前まで長く海外で生活していたことがなく、生活の本拠地が日本といえること
・海外渡航回数が多い場合や海外で過ごしている期間が長いと、永住ビザ申請が不許可になる可能性があります。
④ これまで持っていたビザに対応する適切な活動をやってきたこと
・留学ビザの時にオーバーワーク(※1)をしていなかったこと、就労ビザで認められる活動(※2)をしてきたことなど
※1 留学生は、資格外活動許可を取っていれば、週28時間以内、学校が休暇の時期は週40時間以内、アルバイトをすることができますが、この時間を超えて働いてしまった場合、資格外活動許可違反(法律違反)となってしまいます。複数のアルバイトをしている場合でも、合計週28時間以内でなければなりません。
※2 例えば、「技術・人文知識・国際業務」ビザは「理学、工学その他の自然科学分野に属する知識を必要とする業務」が許可されていますが、工場の製造ラインで製品の袋詰め作業に従事することは関連性がなく該当しません。その場合は、資格外の活動をしたことになってしまいます。
⑤ 住民税や健康保険料、年金の支払いを怠ったことがないこと、支払いに遅れたことがないこと
・これまで年金の支払いは審査の対象ではありませんでしたが、これからは年金の支払い状況も審査対象となります。会社で社会保険に加入している方や口座からの自動引き落としをしている方は安心ですね。
⑥ 年収が約300万円以上であること
・安定した生活ができる収入額があることが大事です。
・扶養親族が多い場合、年収300万円では足りないこともあります。
(配偶者や子供などの扶養されている人は世帯収入によって判断されます。)
⑦ その他、法律で定められた義務(特に入管法における各種届出義務等)をきちんと行い、違反や罪を犯していないこと
・家族と一緒に永住許可申請を行う場合、家族の法令遵守態度も評価対象です。家族の素行が悪い場合、連帯責任として本人も不許可となることがあります。
※入管法における各種届出義務とは、氏名、国籍・地域、生年月日、性別に変更があった場合、所属機関に変更があった場合、配偶者との離婚等の場合などに、きちんと届出をする必要があることです。
※生活や仕事の状況等によって、下記以外にも必要な書類が求められる場合もあります。
(出入国在留管理庁のページはこちら)
申請直前の1年間のうち、半年以上、海外で生活をしており、生活の本拠地が日本にないのでは…とのことで不許可になってしまった。
<申請ワンポイントアドバイス>
上記のポイント③に関連します。
仕事の都合で、頻繁にあるいは長期間出国せざるを得ないケースもあります。その場合は、出国の理由を明らかにし、出国理由、出国の頻度や期間の説明するようにしましょう。勤務先にご協力をお願いし、出張命令書、出張記録を証明する資料を作成して、永住許可を取得した事例もあります。
住民税や健康保険料の支払期限が過ぎてから支払っていたことを指摘され不許可になってしまった。
<申請ワンポイントアドバイス>
上記のポイント⑤に関連します。
この場合、最低1年間は納期通りに納付した実績を作ってから永住ビザの再申請をすることをお勧めします。
年金の未払いがあり、不許可になってしまった。
<申請ワンポイントアドバイス>
上記のポイント⑤に関連します。
未納・滞納がある年金保険料は、2年遡って納付することができます。永住ビザ申請をする前に、まずは未納・滞納がある年金を支払いましょう。
ただ、未納・滞納となっている年金保険料を全て支払ったからと言って、永住ビザ申請をして許可を得ることができるかというとそうではありません。未納・滞納がある年金保険料を支払った後も定期的に滞納なく年金を支払っていることを証明するため、一定期間は納期通りに納付した実績を作ってから永住ビザを申請することをお勧めします。
直近5年分の住民税の課税証明書を提出した際、過去3年間の収入が300万円を満たさず、就労状況が安定していないと判断され、不許可になってしまった。
<申請ワンポイントアドバイス>
上記のポイント⑥に関連します。
海外での所得や貯金額などがあり、収入が300万円以下であっても安定していると考える方もいますが、永住許可を得るのは難しいです。永住の年収要件は、あくまでも日本に生活基盤を持つことを前提として、審査されているからです。
以上となります。
必要な要件をきちんと理解し、特に、上記の不許可事例のような抜け漏れがないよう、ご注意ください。
今はまだ要件を満たさない方も、将来、永住ビザを取得したいと思ったときに、スムーズに申請が進むよう、これから暮らしていく中でこれらのポイントを念頭に置いてもらえると良いと思います!