在留資格/企業支援/翻訳に対応
行政書士法人 IPPO日本で暮らす外国人の方に義務付けられていることの一つに「所属機関に関する届出」があります。在留資格の更新を忘れて、在留期限が過ぎてしまったら大変だ、ということはほとんど全ての外国人がよく分かっていると思いますが、この手続はそれに比べると地味で、手続きも簡単なのですが、それゆえにうっかり忘れてしまう人、あるいはそもそもそんな届出が必要なこと自体知らなかった、という人もしばしばいらっしゃいます。
しかし、この手続、実はとても重要で、うっかり忘れてしまうと想像以上の不利益が生じる可能性があります。以下では「所属機関に関する届出」の概要と、失念してしまった場合の不利益、届出のやり方について解説させていただきます。
所属機関に関する届出とは、外国人在留者が所属する企業、学校、または団体が変更となった場合や新たに所属することになった場合に、その情報を出入国在留管理庁(入管)に報告する手続きです。
ちなみに結婚など、身分上の結びつきによって在留資格を得ている方については、所属機関に関する届出の義務はありませんが、代わりに「配偶者等に関する届出」という身分事項の変更を届け出る義務が課せられています。要するに「与えられている在留資格の前提となっている状況に変更があった場合は必ず報告してくださいね」というルールになっているわけです。
例えば、留学生が大学を中退した場合や、就労ビザで働く外国人の方が転職した場合には、14日以内に届け出を行う義務があります。
届出の内容としては、転職などで所属機関が変わった場合だけではなく、所属機関の名称変更・所在地変更・消滅も含まれるため、自らが転職した場合に限られず、所属機関の状況が変わった場合にも届出が必要となることがあります。
合併や分割などで会社組織の変更があった場合などは、届出が漏れやすいので注意が必要です。法人の名前が変わっても、自分の業務や通勤先には影響がないので、届出が必要であると認識していない場合が多いですが、そうした場合でも適切に届出を行わないと後述のような不利益が生じる可能性があります。合併・分割等で届出が必要かどうかの判断は、こちらの入管庁が公表している資料が分かりやすいです。
出典:出入国在留管理庁ホームページ
日本の入管法では、外国人在留者に対し所属機関の変更を報告する「義務」を課しています。ここで大切なのは、「努力義務」ではなく「義務」であるということです。届出を、「なるべくしてくださいね」ではなく、「しなければいけませんよ」というルールになっています。なので、この手続をしないことは、外国人の方が日本で暮らす上での義務を果たしていないということになり、在留資格の各種手続きにおいて、マイナスの影響を及ぼします。
日本で暮らしている全ての外国人の方は、「永住権」や「高度専門職2号」など、一部の在留資格を除いて、「1年」「3年」「5年」など、有期限の在留期間が与えられ、与えられている在留期限ごとに更新の申請を繰り返す必要がありますが、その時に行う「在留期間更新許可申請」の審査対象には、こうした届出などの入管法上の義務を適切に行っているかどうかというような在留態度全般も含まれます(こうした審査項目を「相当性」と呼びます)。
したがって、こうした届出を忘れてしまうと、遵法意識が低い(在留態度が悪い)として審査のマイナス要因となり、長期間の在留許可が受けられなかったり、最悪の場合、更新自体が認められなかったりする場合があります。
現在時点では、所属機関に関する届出を行っていないことのみを理由に更新が不許可になった事例は確認されていませんが、複数の不許可理由のうちの一つとして、入管から指摘されることはしばしばあります(入管では、申請が不許可になってしまった場合に、一度だけ入管職員から不許可理由の説明を受けられる制度があります)。
最近、弊社で在留期間更新のサポートをさせていただいた外国人のお客様で、勤務している会社の業績、業務内容、給与のいずれも問題なく、これまでに何度か更新しているにもかかわらず、またしても「1年」の許可しかもらえず、入管に理由を聞きに行ったところ、「3年前に転職した際に所属機関に関する届出を行っておらず、現在も届出をしていないため」という回答を受けたというケースがありました。理由はそれだけか、と聞いたところ、「他にはマイナス要素は見当たらない」という答えでした。このように、届出を行っていないことが間接的に不利益に働いているというケースもあるので注意が必要です。入管の方から、届出をしてくださいと促してくれる場合もあれば、今回のように自ら聞きに行かなければずっと分からなかったであろうという場合もあります。
なかなか「3年」以上の許可がもらえないという方は、この届出の漏れがないか確認したり、入管になぜ「1年」しかもらえないのか聞きに行ってみてもいいかもしれません。
永住申請の場合、日本での生活態度全般を更新以上に厳しく審査されることから、届出を忘れたことのみでも不許可理由になり得ます。日本に在留している外国人の皆さまの多くは永住権の取得を目指しているかと思います。このような、思わぬところで足元をすくわれないよう注意しましょう。
届出の手続き自体はそれほど難しいものではありません。
入管指定の様式に記入し、本人の在留カードのコピーと一緒に提出するだけです。指定の様式はA4用紙1枚分のシンプルなもので、内容も本人情報と変更が生じた事項について書くのみなので、それほど記入するときに困ることもないと思います。ただ、在留資格によって、使用する様式が微妙に異なるので、入管のウェブサイトから書式をダウンロードするときには注意してください。記入する内容はほとんど変わりません。
出典:出入国在留管理庁ホームページ
届出の期限は変更事項が生じた日から14日以内とされていますが、現時点(2025年1月)では、この期限内であるかどうかは、それほど重視されておらず、届出をしたかどうか、という観点で考慮されている印象です。なので、もし届出事項発生日から14日を過ぎてしまったという方の場合でも、ぜひ今から届出を行ってください。
所属機関に関する届出の詳細な概要や手続きの案内は下記の入管ウェブサイトから確認することが出来ます。
https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/nyuukokukanri10_00015.html
あまり目立たない手続きですが、日本で生活する外国人の皆さまにとってはとても重要な手続きですので、ぜひ覚えておいていただけたらと思います。
この手続について、ご不明点や不安なことなどがありましたら、いつでも行政書士法人IPPOにお問い合わせください。
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